内縁(相続、財産分与、慰謝料、判例等)についての重要項目をわかりやすく独学する【民法】

2024年1月12日

「内縁」は、内縁関係とも言い、婚姻の届出はしていないが事実上夫婦のように生活をしている男女等の関係で法律上夫婦とは認められないものを言います。民法に明文の規定はありませんが、重要判例等があり、資格試験で問われることがあります。

内縁に関する資格試験での出題傾向

H26H27H28H29H30R1R2R3R4R5
宅建
行書
司書
「内縁」過去10年の出題実績 ※宅建はR2・R3は10月・12月の2回試験あり

「内縁」については、過去10年では司法書士試験で1回出題されたのみです。もともと宅建試験・行政書士試験においては親族法の割合自体が少ないので今後も「内縁」が出題される可能性は低いですが、幅広く出題のある司法書士試験では出題されることもありうるので重要判例の内容くらいは押さえておきたいところです。

内縁の法的要件

内縁は、当事者の合意による事実上の夫婦としての生活を送ることで成立します。ただし、内縁に婚姻と類似する法的効果を認めるうえでは、婚姻障害事由がある場合において内縁を認めるべきかどうかについて問題があり、判例や学説等では次のように判断されています。

婚姻適齢(731条)〇 要件を満たさない場合でも内縁関係は成立しうる。
再婚禁止期間(733条)〇 要件を満たさない場合でも内縁関係は成立しうる。※再婚禁止期間は令和6年改正で削除。
重婚禁止(732条)× 重婚的内縁は原則として認められない。

内縁で法律上問題となる点

内縁関係のポイント

1.子供が生まれた場合、子は嫡出子となるのか

2.正当な理由のない内縁関係の破棄で精神的損害を被った場合、慰謝料を請求できるか

3.内縁の夫婦の一方の死で相続財産分与の請求をすることができるか

4.内縁の夫婦で共有し同居していた建物は、内縁の夫婦の一方の死後どうなる

「内縁」に婚姻の類似的効果が認められるとしても、法律上の夫婦であった場合に起こることに対して内縁を全く同じように考えていいのかどうかという問題があり、このあたりの判例での判断が資格試験で出題されることになります。

内縁夫婦に子供が生まれた場合、子は嫡出子となるのか

内縁の妻が懐胎した子と父の推定 S29.1.21

内縁の妻が内縁関係成立の日から200日後、解消の日から300日以内に分娩した子は民法772条(嫡出推定)の趣旨に従い内縁の夫の子と推定する。

上記判例のとおり、内縁関係の夫婦の子であっても、嫡出推定はされるとしています。

ただし、父と推定される者は認知しなければ法律上一応その子の父として取り扱われることもなく、同様にその子も父に認知されることなく法律上一応推定を受ける父の子として取り扱われることはないとしています。

嫡出推定はされても、父に「認知」されない限り内縁夫婦の子と法律上取り扱われることはないということです。加えて、「婚姻」関係になって準正がされなければ嫡出子になることもないとなります。(※「準正」については別記事で記載しています。)

内縁関係破棄による損害で慰謝料を請求できるか

内縁不当破棄と不法行為の成否 S33.4.11

内縁を不当に破棄された者は、相手方に対し不法行為を理由として損害の賠償を求めることができる。

上記判例の要旨:

不法行為の規定にいう「権利」は法律上保護される利益があれば足りるのであり、内縁も保護されるべき生活関係であるから正当の理由なく破棄された場合は不法行為の責任を追及できる。

よって、内縁関係を不当に破棄された者は、婚約不履行の責任(内縁は「婚姻の予約」である)の損害賠償を求めるとともに、不法行為を理由として損害賠償を求めることができる

内縁で相続や財産分与の請求をすることができるか

内縁の夫婦の一方の死亡による財産分与の類推適用の可否 H12.3.10

内縁夫婦の一方の死亡により内縁関係が解消した場合に、民法768条(財産分与)に規定を類推適用することはできない。

上記判例の要旨:

民法は、法律上の夫婦の財産関係について①離婚の場合は「財産分与」、②死亡の場合は「相続」と区別している。よって、内縁関係の夫婦の一方の死亡の場合に、離婚の場合の財産分与の規定を類推適用することはできない。(死亡ではない離別による解消の場合は類推適用される余地はある。)

※相続については「法律上の配偶者」が相続できる(配偶者相続権)のであり、内縁の夫婦は「法律上の配偶者」ではないので相続することはできません。ただし、相続人不存在の場合に「特別縁故者」として相続財産分与を受けられる可能性(958条の2)があります。

内縁の夫婦で共有し同居していた建物は、一方の死後どうなる?

内縁の夫婦による共有不動産の共同使用と一方の死亡後 H10.2.26

内縁の夫婦がその共有する不動産を居住又は共同事業のために共同で使用してきたときは、特段の事情のない限り、両者の間において、その一方が死亡した後は他方が右不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認される。

内縁の夫婦が共有していた不動産を、一方が死亡後にその子が共有持分を相続したため、その子と不動産の所有や使用、賃料について争いになってしまいました。

上記判例の要旨:

本来、共有者間で合意があればその合意が変更されるまでは単独使用が認められるところ、内縁夫婦がその共有する不動産を居住又は共同事業のために共同で使用してきたという事情の下では、両者間で一方の死亡後は単独使用できる旨の合意が成立していたと推認するのが相当である。

そうすると、残された内縁配偶者に不動産の無償の全面使用を継続させることが両者の通常の意思に合致する。

その他の民法の規定の類推適用

同居、協力、扶助の義務(752条)夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
婚姻費用の分担(760条)夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
日常の家事に関する債務の連帯責任(761条)夫婦の一方が日常の家事に関して負った債務については、原則として連帯責任を負う。
夫婦間における財産の帰属(762条)夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定。

内縁に関する出題手口の例

(普)内縁関係にある夫婦の一方が不貞行為を行った場合でも、損害賠償を請求することはできない。

答え

× (内縁関係には貞操義務が類推適用され、不法行為による損害賠償請求をすることができる。)

婚姻,民法,親族法

Posted by getter