付合・混和・加工の重要項目をわかりやすく独学する【民法・物権法】

「付合」「混和」「加工」は、物権法のうち、所有権の取得に関する法律で、民法242条~248条までに規定されています。付合・混和・加工は「添付」と呼ばれる所有権の取得原因の一つで、付合・混和・加工の条文では、物にこれらのことが起こった場合の所有権の帰属をどうするかということが取り決められています。

付合・混和・加工に関する資格試験での出題傾向

H26H27H28H29H30R1R2R3R4R5
宅建
行書
司書
「付合・混和・加工」過去10年の出題実績 ※宅建はR2・R3は10月・12月の2回試験あり

「付合・混和・加工」は、過去10年、宅建試験、行政書士試験での出題はなく、物権法の出題の多い司法書士試験では2回の出題があります。民法の中でもマイナーな内容のため、宅建・行政書士各試験では物権の問題数から言っても出題の可能性は低い内容ではありますが、条文の量は少ないためさらっと勉強しておくのは悪くないでしょう。

付合(民法242条~244条)

不動産の付合

第二百四十二条 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。

条文のポイント

原則:不動産に従として付合した物は、その不動産の所有者が所有権を取得。

例外:権原(地上権等)によって附属させた物は、附属させた者の権利を妨げない。

「付合」とは、所有者の異なる2つ以上のものが結合することです。不動産の付合は、不動産に従として物が付合することを指します。例えば、Aの家にBがベランダを取り付けた場合、そのベランダは家の所有者Aのものとなるといった具合です。

例外的に、権原によって物を附属させた場合は、その物を附属させた他人のものとなります。例えば、土地に設定された地上権者が、土地使用の「権原」によって立木を植えた場合は、その立木は地上権者の所有となります。ただし、この例外は絶対的なものではなく「弱い付合」である場合のみとなり、これがもし「強い付合」だった場合は不動産の所有者の所有権に吸収されてしまいます。

動産の付合(243条・244条)

第二百四十三条 所有者を異にする数個の動産が、付合により、損傷しなければ分離することができなくなったときは、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に帰属する。分離するのに過分の費用を要するときも、同様とする。

第二百四十四条 付合した動産について主従の区別をすることができないときは、各動産の所有者は、その付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する。

条文のポイント

1.所有者の異なる数個の動産が分離できなくなったとき → 主たる動産の所有者に帰属

2.区別できないとき → 価格の割合に応じて共有

所有者の異なる数個の動産が「付合」し、その物を損傷しなければ分離できなくなったときは、主たる動産の所有者に合成物の所有権が帰属します。例えば、A所有の動産とB所有の動産が付合して損傷しなければ分離できない場合で、主たる動産がA所有の動産のときは、Aが所有権を取得するということです。この場合、Bが所有していた動産の所有権については消滅してしまいます。

ただし、付合しても容易に分離できるときは、分離すればよいだけなので、この規定は当てはまりません。

また、主従を区別できないときは、付合の時における価格の割合で共有することになります。

混和(民法245条)

第二百四十五条 前二条の規定は、所有者を異にする物が混和して識別することができなくなった場合について準用する。

条文のポイント

1.混和 → 物が混ざり合うこと

2.動産の付合の規定(243条・244条)を準用。

「混和」とは、固形物・液体などの物が混合することです。

例えば、それぞれ所有者の異なる「A」と「B」という物(液体など)があったとします。これらが混ざり合って識別することができなくなった場合、動産の付合の規定を準用して考えます。

主たる物がAであったとき主たる物である物Aの所有者に所有権が帰属(243条準用)
主従の区別ができないとき混和の時の価格の割合に応じてその物を共有(244条準用)

主たる物がAであったときは、主たる物であるAの所有者に混和物の所有権は帰属します。この場合、Bの所有者の所有権は消滅します。また、主従の区別ができない場合は、混和の時の価格の割合に応じてその物を共有することになります。

加工(民法246条)

第二百四十六条 他人の動産に工作を加えた者(以下この条において「加工者」という。)があるときは、その加工物の所有権は、材料の所有者に帰属する。ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する。

2 前項に規定する場合において、加工者が材料の一部を供したときは、その価格に工作によって生じた価格を加えたものが他人の材料の価格を超えるときに限り、加工者がその加工物の所有権を取得する。

条文のポイント

1.加工者・・・他人の動産に工作を加えた者

2.加工物・・・加工者が(「他人の動産(材料)」に)工作を加えた物

「加工」は、付合・混和とは少々異なります。他人の動産に工作を加えた場合、その加工物の所有権は誰に帰属するのかという内容です。

加工物の所有権
原則材料の所有者に帰属
例外①工作によって生じた価格が「材料の価格」を著しく超えるときは、加工者
例外②加工者が材料の一部を提供し、その材料の価格+工作で生じた価格 > 「材料の価格」のときは、加工者

加工者が動産に加工を加えたとしても、原則として「動産(材料)の所有者」に所有権が帰属します。2パターンの例外では、加工者に所有権が帰属します。①工作によって生じた価格が「材料の価格」を著しく超える場合②加工者が材料を一部提供した場合の材料価格と工作で生じた価格の合計が「材料の価格」を超える場合となります。

この加工の規定は「動産」にのみ適用されるという点と、契約等で加工を行う場合は適用されないという点には注意が必要です。

付合・混和・加工の効果(民法247条)

第二百四十七条 第二百四十二条から前条までの規定により物の所有権が消滅したときは、その物について存する他の権利も消滅する。

2 前項に規定する場合において、物の所有者が、合成物、混和物又は加工物(以下この項において「合成物等」という。)の単独所有者となったときは、その物について存する他の権利は以後その合成物等について存し、物の所有者が合成物等の共有者となったときは、その物について存する他の権利は以後その持分について存する。

条文のポイント

1.その物について存する他の権利・・・留置権、先取特権、質権、賃借権など

2.合成物等・・・合成物、混和物、加工物

付合・混和・加工によって一方の物の所有権が消滅したとき、その消滅した所有権の物に存する他の権利も消滅するという規定です。物自体は合成物等として残ってはいますが、所有権が前提の権利はその所有権が消滅したら一緒に消滅してしまうということです。

逆に、合成物等の単独所有者となった場合はその合成物等に存続し、共有者となった場合は持分に存続することになります。

物の所有者他の権利
①所有権が消滅消滅
②単独所有者となった合成物等に存続
③共有者となった持分に存続

付合・混和・加工に伴う償金の請求(民法248条)

第二百四十八条 第二百四十二条から前条までの規定の適用によって損失を受けた者は、第七百三条及び第七百四条の規定に従い、その償金を請求することができる。

付合・混和・加工によって損失を受けた(所有権を失った)者は、所有権を取得した者に償金を請求することができるという規定です。この場合、不当利得(703条・704条)の規定が適用されます。言わば仕方なく所有権の帰属を決めて、一方が得をしてもう一方が損をしたようなものですから、得した分をお金で払ってもらうのが妥当ということでしょう。

付合・混和・加工の出題手口の例

(普)Aの所有する甲液体とBの所有する乙液体が混和して識別することができなくなった場合において、甲液体が主たる液体であったときは、AとBが価格の割合に応じて混和した液体を共有する。

答え

× (主たる液体の所有者Aに混和物の所有権が帰属する。)

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所有権,物権法,民法

Posted by getter