失踪宣告(効力、取消し)の重要部分をわかりやすく独学する【民法】

2023年12月27日

このページでは、民法の総則の第二章「人」中にある「失踪宣告」について解説します。

失踪宣告とは、不在者(行方が分からなくなった人)を「死亡」した扱いにする手続です。不在者が生死不明のままだと相続などができないのでやむなく失踪宣告の手続をするというイメージです。民法では30~32条までに規定されています。

失踪宣告に関する資格試験での出題傾向

H26H27H28H29H30R1R2R3R4R5
宅建
行政書士
司法書士
「失踪宣告」過去10年の出題実績 ※宅建はR2・R3は10月・12月の2回試験あり

過去10年、宅建・行政書士・司法書士試験でそれぞれ各1回のみと出題が多い項目とは言えませんが、全く出ないわけではないので学習は必要といえます。(分量は少なめです。)

重要条文① 民法30条(失踪の宣告)

第三十条 不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。

2 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危機に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。

まず気を付けなければならないのは、「失踪宣告をすることができる」という点です。しなければならないわけではありません。

条文のポイント

請求できる条件 →  不在者の生死が7年間明らかでないとき(遭難者等は危難等が去った後1年間

どこに請求するのか? → 家庭裁判所

誰が請求できるのか? →  利害関係人

失踪宣告は「家庭裁判所」に請求し、利害関係人であれば誰でも請求することができます。家族に限られるわけではないのですね。

重要条文② 民法31条(失踪の宣告の効力)

三十一条 前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。

条文のポイント

①30条1項の失踪宣告を受けた者 → 生死不明の時から7年間満了した時

②30条2項の失踪宣告を受けた者 → 危難が去った時

→ 死亡したものとみなす

注意点は「失踪宣告の効力発生は、失踪宣告の時ではない」ということです(失踪宣告は失踪から7年間満了した後に受けます。※引っ掛け問題の選択肢としても出題されやすいところ)。また、死亡したものとみなされても本人の権利能力は残るということに注意してください。もしどこかで生きていれば住居を借りているなどしているかもしれないからです。

重要条文③ 民法32条(失踪宣告の取消し)

三十二条 失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行動の行為の効力に影響を及ぼさない。

2 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。

「失踪者が実は生存していた場合」などは失踪宣告を取り消すことができます。いくら行方が分からなかったといっても実際生きているのに「一度死亡扱いされたらもう終わり」なんてなったら本人は困ってしまいます。

請求があった場合、家庭裁判所は失踪宣告を「必ず取り消さなければならない」という点が重要です。上述のように生きている本人から請求があるのに死亡扱いのままではまずいですよね。

条文のポイント

請求できる条件 → 「失踪者が生存すること」

         又は「31条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったとき」

どこに請求するのか? → 家庭裁判所

誰が請求できるのか? → 本人及び利害関係人

ただし、失踪宣告の取消しの効果は、取消し前に「善意でした行動の行為」の効果に影響を与えません。この場合の善意というのは「(本人が生きていることを)知らずに」という意味です。例えば、本人失踪後にその配偶者が相手を見つけて再婚していた場合は、その再婚がお互い善意のものであれば取消しの対象にはなりません(重婚にもなりません)。

失踪宣告の出題手口の例

(普)不在者が死亡したとみなされるのは、不在者の生死が不明になってから7年経過後、家庭裁判所から失踪の宣告をされた時である。

答え

× (失踪宣告後で、不在者の生死が不明になってから7年間満了した時)

(難)失踪者が生存していることが明らかになった場合、家庭裁判所は本人又は利害関係人の請求により、失踪宣告を取り消さなければならないが、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に本人の相続人Aが善意でしたBへの売買は、Bが悪意だった場合でもその売買の効力に影響を及ぼさない。

答え

× (AもBも善意でなければならない。)

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,総則,民法

Posted by getter