離縁(協議離縁・裁判離縁)の重要項目をわかりやすく独学する【民法】

2024年1月12日

「離縁」は、養子縁組を解消するための手続です。この記事では「普通養子縁組」の離縁について記載します。民法では親族法に分類され、811~817条までに規定されています。(特別養子縁組の離縁は内容が異なります。)

離縁に関する資格試験での出題傾向

H26H27H28H29H30R1R2R3R4R5
宅建
行書
司書
「養子」過去10年の出題実績 ※宅建はR2・R3は10月・12月の2回試験あり

「養子」については行政書士試験では過去10年に2回、司法書士試験では5回も出題されていますが、「離縁」が出題されたのは司法書士試験R1の1回のみで、行政書士試験でも出題はありません(宅建は親族法自体の出題が少ない)。試験での出題を考慮するとそれほど重要な内容とは言えないかもしれませんが、分量は多くはないので特に司法書士試験の勉強をする方はさらっと目を通しておくくらいはしておいたほうがよいでしょう。

協議離縁(民法811条)

第八百十一条 縁組の当事者は、その協議で離縁することができる。

離縁には「協議離縁」と「裁判離縁」があります。まず、原則は「協議離縁」です。縁組の当事者は、協議によって離縁することができます(811条1項)。その他、協議離縁をする上で、次の各状況に応じて要件等があります。(811条2~6項、811条の2)

状況要件等
養子が15歳未満であるとき(2項)養親と養子の離縁後にその法定代理人となるべき者との協議で離縁する。
前項の場合で、養子の父母が離婚しているとき(3項)父母の協議で、その一方を養子の離縁後にその親権者となるべき者と定めなければならない。
前項の協議が調わない又は協議ができない場合(4項)家庭裁判所は、前項の父、母、又は養親の請求によって、「協議に代わる審判」をすることができる。
2項の法定代理人となるべき者がないとき(5項)家庭裁判所は、養子の親族その他の利害関係人の請求によって、養子の離縁後にその未成年後見人となるべき者を選任する。
縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁しようとするとき(6項)家庭裁判所の許可を得て、離縁できる(死後離縁
養親が夫婦である場合で未成年者と離縁をする場合(811条の2)原則:夫婦が共同でしなければならない。
例外:夫婦の一方が意思表示不可の場合は別。

養子が15歳未満(2~5項)

15歳以上の者は自ら養子縁組・離縁が可能なため、自ら離縁することができない15歳未満の養子が離縁する場合に問題となります。簡単に言えば、養子が15歳未満の場合、養親は、養子ではなく、離縁した後に養子の保護者の立場となる者と協議しなければならないということです。この者はそれぞれ状況(2項・3項・5項)によって変わります。

※4項「協議に代わる審判」の協議とは、3項における養子の父母による「親権者となるべき者」を定める協議のことです。(紛らわしいですが、協議離縁の協議ではありません。)

死後離縁(6項)

縁組の当事者の一方が死亡した場合にも、もう一方の生存している者は離縁をすることができます。「死後離縁」と呼ばれていますが、家庭裁判所の許可が必要です。

夫婦である養親と未成年者の離縁(811条の2)

夫婦共同縁組(配偶者のある者が未成年者を養子とする縁組)をした場合、原則として、離縁も夫婦共同でする必要があります。

協議離縁の方式(民法812条~813条)

届出※婚姻の規定(738~739条)を準用。
戸籍法の定めるところにより、届出をすることによって効力を生ずる。
届出は、当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭でする。
成年被後見人が離縁をするには、その成年後見人の同意を要しない
取消※婚姻の取消しの規定(747条)を準用。
詐欺又は強迫によって離縁をした者は、その離縁の取消しを家庭裁判所に請求できる。
当事者が詐欺を発見し、もしくは強迫を免れた後6か月を経過し、又は追認したときは、離縁の取消権は消滅する。
受理届出の規定、811条~811条の2の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ受理不可。ただし、これらの規定に違反した届出が受理されたときであっても、離縁は有効となる。

協議離縁は役所に届出をすることによってすることができます。この届出の方式は婚姻の規定を準用していますが、離婚・縁組(特別養子縁組を除く)でも準用されており、婚姻・離婚・普通養子縁組・離縁で共通です。

届出の受理は役所が行い、規定違反がある場合は受理されません。ただし、手違いで規定違反の離縁が受理されてしまった場合でも、取消しがない限り有効となります。これも婚姻・離婚・普通養子縁組・離縁で共通の内容です。

もし、詐欺又は強迫によって離縁をしてしまった場合は、離縁の取消しを家庭裁判所に請求することができます。この規定も婚姻の取消しの規定を準用していますが、取消権を行使できる期間が詐欺発見又は強迫を免れた後6か月(婚姻は3か月)となっている点に注意が必要です。

裁判離縁・離縁の訴え(民法814条)

第八百十四条 縁組の当事者の一方は、次に掲げる場合に限り、離縁の訴えを提起することができる。

一 他の一方から悪意で遺棄されたとき。

二 他の一方の生死が三年以上明らかでないとき。

三 その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき。

2 第七百七十条第二項の規定は、前項第一号及び第二号に掲げる場合について準用する。

条文のポイント

縁組の当事者の一方は、条件付きで「離縁の訴え」を提起できる。

→ 一方が同意しない場合でも離縁が可能。

養子縁組をしたときはお互い同意のもとであったはずですが、実際に縁組をしたところどうしても離縁をしたくなったということは起こりうるでしょう。しかし、離縁をしたいのが一方のみで、相手の同意が得られず協議離縁ができない場合、条件付きで「離縁の訴え」を提起して離縁をすることが可能です。このあたりは離婚の規定と似ています。

2項でも裁判離婚の規定が準用されており、家庭裁判所は、一号・二号の事由に該当していても無条件に離縁を認めるわけではなく請求を棄却することができます。

養子が十五歳未満である場合の離縁の訴えの当事者(民法815条)

養子が15歳に達しない間は、811条規定により養親と離縁の協議をすることができる者が、離縁の訴えの当事者となります。

状況訴えの当事者
養子が15歳未満養子の離縁後にその法定代理人となるべき者
15歳未満の養子の父母が離婚しているとき養子の離縁後にその親権者となるべき者
15歳未満の養子の離縁後にその法定代理人となるべき者がないとき養子の離縁後にその未成年後見人となるべき者

離縁の効果

離縁による復氏等(816条1項)原則:養子は、離縁によって縁組前の氏に復する
例外:ただし、配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁をした場合は復氏しない。
縁組の日から7年経過後に離縁による復氏をした者(816条2項)離縁の日から3か月以内に戸籍法の定めるところにより届出をすることによって、離縁の際に称していた氏を称することができる。
離縁による復氏の際の権利の承継(817条)769条(897条を準用)を準用。※試験ではあまり重要ではないと思われるため省略

離縁をすると、養子は原則として縁組前の氏に復氏します。ただし、例外的に配偶者とともに養親となった者の一方のみと離縁した場合はそのままの氏となります。

また、縁組の日から7年以上経過した後に離縁をした場合は、特例として離縁日から3か月以内の間は届出によって「離縁の際に称していた氏(養親の氏)」に戻すことができます。離婚にも同様の規定がありますが、離縁の場合は条件付きで可能ということになります。

離婚離婚日から3か月以内に届出で変更可能
離縁縁組日から7年経過後に離縁した場合、離縁日から3か月以内に届出で変更可能

離縁による親族関係の終了(民法729条)

第七百二十九条 養子及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は、離縁によって終了する。

養子縁組によって養子は養親側と親族関係(法定血族)となっていましたが、離縁によって養親との親族関係は終了してしまいます。親族になったりならなくなったりとドライな感じですが、親子関係を解消して親族関係はそのままというわけにもいきません。離縁に伴い「養子の配偶者」や「(縁組後に出生した)養子の直系卑属とその配偶者」も、養親と親族関係が終了します。

離縁に関する出題手口の例

(普)普通養子縁組の当事者は、養子が15歳未満であって離縁後にその法定代理人となるべき者がないときは、離縁の訴えによらなければ、離縁をすることができない。

答え

× (家庭裁判所により選任された「養子の離縁後にその未成年後見人となるべき者」との協議で離縁することができる。)

民法,親族法,養子

Posted by getter